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2026年5月11日  |  エンタテインメント

Vectorworks Spotlightでアリーナ公演をデザインする


Vince Foster

本記事は、2025年3月6日に米国本社のNewsRoomに掲載された「DESIGNING ARENA SHOWS WITH VECTORWORKS SPOTLIGHT」の完訳です。日本独自の加筆、修正を含みます。

1979年からライブエンタテインメント業界で活動しているショーデザイナーのVince Fosterと申します。私が学生だった1978年当時、イギリスのハートフォードシャー州の自宅近くにある貴族の邸宅「Knebworth House(ネブワース・ハウス)」で開かれたフェスティバルに、Genesisのコンサートを見に行きました。そのコンサートは90,000人の観客を前にステージで演奏するミュージシャンを見るものであり、そこにスピーカーと楽器以外の何かがあるとは、私はまったく考えていませんでした。しかし、私が実際に目にしたのは、驚くほど素晴らしいライティングショーでした。バンドの頭上で巨大なミラーが動き、そのミラーにライトが当たって反射することで光が動いて見え、さらにレーザーやスモークなどの演出もあり、私は衝撃を受けました。

その翌年、私は最終学年で、自分がこれから何をしていくのかを考えている中、Led Zeppelinがそこで演奏することを知りました。そして私はコンサートの約6日前に、自転車に乗って会場まで行き、ステージ横のフェンスで囲まれたエリアのドアを叩いて、何か仕事がないかを尋ねましたが、「帰れ」と追い返されました。翌日も訪ねましたが、また追い返されました。 

3回目の挑戦で、1日10ポンドというわずかな報酬で、誰もやりたがらない雑用を何でも引き受ける雑用係として、私はその現場に入ることができました。

それがすべての始まりで、そこからは振り返ることなく、この道を歩み続けています。その後、The Rolling StonesやPink Floydなど、さまざまなショーの舞台係として働くようになりました。

特に私が常に興味を持っていたのは照明でした。当時、この業界はまだ黎明期にあり、私はそれに気づいていませんでしたが、その後10年間でツアー業界は急速に発展し、結果的に最適な時期にこの世界へ入ったことになります。当時私は16歳で、この仕事に関わりたいという強い思いがありましたが、その頃は、照明デザインや音響技術、舞台管理を専門的に学べる学位など、どこにもありませんでした。この業界には、バンドと知り合いになったことがきっかけでこの世界に入った人がたくさんおり、バンドが有名になると、最初から彼らと一緒にいた人たちは、当時のサーカスのような世界の中で、それぞれの役割や技術を少しずつ磨いていきました。

40年以上が経った今でも、私は好きな仕事を続けています。勤務時間は非常に長く、移動は退屈でつらいことが多いですが、仲間との絆や、何か特別なものの一員であるという感覚は、どんなマイナス要素も上回ります。この業界には、天才や先駆者、そして型破りな人材が数多く存在しており、その特別さを生み出しているのは、皆が同じ目的に向かって働いている点です。作業を終え、ショーを行い、その後ステージを撤去してトラックに積み込み、別の都市へ移動して、再びすべてを組み立て直す作業を繰り返します。

動物は登場しませんが、これをサーカスに例えるのは、的確な表現だと思います。このサーカスは、奇抜なアイデアと最先端の技術であふれています。現在では何十億ドル規模の産業となり、才能ある人々がさまざまな奇抜で創造的なことを成し遂げながら、常に限界を押し広げ続けています。

最近、私の創造性を刺激してくれたプロジェクトの一つにJamiroquaiの案件があり、そのアリーナ公演がどのようにして具現化されたかをご紹介します。

JAMIROQUAIのアリーナ公演をデザインする

Jamiroquaiとは、25年以上にわたって一緒に仕事をしてきました。昨年の夏、5年間ツアーを行っていなかったJamiroquaiのリーダーであるJayは、再びツアーを始めたいと言い出しました。彼とバンドは新たなアルバムを制作しており、新しい楽曲の反応を確かめる時期に差し掛かっていました。 私たちは白い紙の前に座り、彼がその上に「エジプト、宇宙、楽園、ディスコ」という4つの言葉を書き出しました。 

Vince Foster notes

ご覧のとおり、奥には巨大なスクリーンがあり、そのスクリーンには、蝶やエキゾチックな鳥、夕日、すべてを見通す目、そして空を飛ぶ魚のようなものが描かれた、ややラフな楽園のシーンが映し出されています。また、手前には、いくつかのヤシの木、水柱、バンド、そして観覧席や階段があります。

これが、この会議で私が得たものであり、素晴らしいスタートでした。なぜなら、初回の会議のあと、何も書かれていない、あるいはほとんど内容のない紙だけを持ち帰ったことが何度あったか、数えきれないからです。多くの場合、アーティストは自分が何を望んでいるのか明確なイメージを持っておらず、デザイナーにコンセプトを提案してもらうことに頼ることがありますが、コンセプトを提案し、空白を埋めるのは私の役割なので、それは問題ありません。しかし、Jayは今回、自身の要望を非常に明確に持っていました。これは彼の図面であり、私が描いたものではありません。私の役割は、これを実現可能なデザインに落とし込むことでした。当然のことながら、舞台の後方に大型スクリーンを設置する必要があると判断し、幅20メートル、高さ12メートルのLEDスクリーンを採用することになりました。

ピラミッドを立体的に見せるため、メインスクリーン上に表示するのではなく、メインスクリーンの前に2つのスクリーンを配置し、45度に傾けてピラミッドを形成することを考案しました。これは、かなり異例のものであり、この実現方法を綿密に検討する必要がありました。それから、彼が「ウォーターバブル・コラム(水柱)」と呼んでいた6本の柱を、LEDスクリーンで実現するのが最適だと考えました。そうすれば、私たちが表現したいどのような内容でも映し出せるし、少し想像力を働かせるだけで、別のものに変身させることもできます。また、彼はセットの前面に水が滝のように流れ落ちることを望んでいましたが、それはツアーの公演にはあまり実用的ではなかったため、これもLEDスクリーンで実現することにしました。メインスクリーンと柱には一般的なLEDを、ピラミッドには透明LEDを選択しました。ピラミッドはメッシュスクリーンで、オンにすると高解像度の画像が鮮明に表示され、オフにすると、ほとんど見えなくなり、後方のスクリーンが透けて見えるようになります。セットの前面にも、同じタイプのスクリーンを使用し、その後方に照明を配置することで、ビデオキャンバスをデザインしました。

Vince Foster Vectorworks Spotlight 1

これらはVectorworks Spotlightで作図しました。

次に、セットです。オリジナルのスケッチに基づいて、このデザインを考案しました。ツアー用にセットをレンタルしたため、レンタル会社が保有する既存部品で構成する必要があり、下の図は、8×4フィート、4×4フィート、8×2フィートのデッキを、さまざまなサイズの脚で組み合わせて、セットの異なるレベルを実現したものです。木々は特注で製作されましたが、結果的に、それらは使用されませんでした。ショーのために多彩なデザインや演出を試みましたが、それらを木以外のものとして見せるのが非常に難しく、木がしっくりと合ったのも一部のスタイルに限られたため、必要なときにコンテンツとしてスクリーンに表示するほうが簡単だったのです。

Vince Foster Vectorworks Spotlight 1

次の課題は、これらの舞台装置をどのように吊り下げて動かすかを検討することでした。これらのスクリーンは非常に重く、20メートル×12メートルのスクリーンは、およそ6トンあります。フレームとケーブルを含めると、各ピラミッドはおよそ2トンあり、各柱はおよそ500kgあります。すべての重さが積み重なりますが、これらを支える唯一の方法は、上部のトラスに取り付けてセクションごとに吊り上げることであり、これは私が考案しました。

Vince Foster Vectorworks Spotlight 3

これでセットと映像の準備が整いました。次は、ミュージシャンの配置場所を検討する段階です。

Vince Foster Vectorworks Spotlight 4

バンドの配置が決まり、アーティストの承認が得られた後は、ミュージシャンの周囲の吊り照明や、バンド上部、さらに吊り下げられたLED要素との兼ね合いを考慮して、照明器具の配置方法を検討する必要があります。あわせて、音響とケーブル管理の要件も考慮します。Vectorworksには、モーター(ホイスト)、トラス、リギング、照明、音響、楽器など、これらすべての要素を収録した非常に優れた標準ライブラリがあり、この図面に含まれるすべてのコンポーネントは、そのライブラリを使用しています。

最後のステップは、このモデルを会場に設置することです。SketchUp用の3DリソースサイトであるTrimbleから希望する会場を見つけ、作図データに取り込みました。位置を調整し、これで図面が完成しました。

Vince Foster Vectorworks Spotlight 5

これがその結果です。図面に人物の2Dモデルを追加して観客を表現し、さらにサイドスクリーンを配置して完成です。

以下は、完成したショーの写真です。うまく仕上がったと思います。エジプト風で、宇宙的なディスコの楽園です。

Jamiroquai arena show 1
Jamiroquai arena show 2
Jamiroquai arena show 3
Jamiroquai arena show 4

VINCE FOSTERのデザインをご覧ください

VINCE FOSTER によるアリーナデザインのプロセスを、無料ウェビナーでご覧いただけます。

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掲載しているすべての画像は、Vince Foster氏の提供によるものです。